応用言語学データ分析論b

担当教員:志波彩子
期別:後期
曜日/時限:火4
講義室:北棟107号室
オフィス
アワー:
火曜3限(北棟402号室)

講義題目
日本語の受身構文とテクストジャンル

目的・ねらい
日本語の文法研究の中で常に高い関心を集めてきた受身文について,研究史を概観し,日本語の受身文の特徴について理解し,問題の所在を探る。さらに,ジャンルの異なるテクストから受身文を抽出し,それぞれのテクストにどのような受身構文タイプが現れるかを分析することで,テクストジャンル(文体)と文タイプとの関係を考える。

講義内容
日本語の受身文については膨大な研究の蓄積があるが,まずはその中の2つの大きな流れを捉える。授業では,三上章,鈴木重幸,久野暲,山田孝雄,松下大三郎,黒田茂幸,益岡隆志,金水敏の一連の研究を主に扱うが,これは分担を決めて,受講者に簡単に内容を紹介してもらう形で進める。ここでは,日本語の受身文について,どのようなことが議論されてきたか,またどのような問題が残されているかを明らかにしていく。その上で,明治期に翻訳の影響を受ける以前の日本語の受身文がどのような特徴を持っていたかを講義する。
以上を理解した上で,実際のコーパスから受身文の用例を抽出し,分析してもらう。テクストのジャンル別にデータを分析し,受講者に発表してもらう形で進められればと考えている。

1. 日本語の受身文研究史 (三上章,鈴木重幸,久野暲らvs.山田孝雄,松下大三郎,黒田茂幸,益岡隆志,金水敏ら)
2. 近世以前の日本語の受身文について
3. テクストジャンル別,受身文データの分析
 3.1 テクストから用例を抽出し,分類する方法について
 3.2 小説の会話文テクスト
 3.3 小説の地の文テクスト
 3.4 新聞の報道文テクスト
 3.5 論説文テクスト
4. テクストジャンル(文体)と文タイプについて

教科書
プリントを配布します。

参考書
川村 大(2012)『ラル形述語文の研究』くろしお出版
金水 敏(
1991)「受動文の歴史についての一考察」『国語学』164

金水 敏(
1993
)「受動文の固有・非固有性について」 近代語研究 第九集 武蔵野書院
久野 暲(
1983
『新日本文法研究』大修館書店
柴谷方良(1997)「言語の機能と構造と類型」『言語研究』112
鈴木重幸(1972)『日本語文法・形態論』むぎ書房
益岡隆志(1982)「日本語受動文の意味分析」『言語研究』8248-64(再録:「受動表現の意味分析」益岡1987『命題の文法―日本語文法序説―』くろしお出版)
松下大三郎1928『改撰標準日本文法』紀元社訂正版中文館書店1930,同復刻:徳田政信編『改撰標準日本文法』勉誠社1974,同訂正再版:1978
三上章(
1953)『
現代語法序説』刀江書院

山田孝雄1908
『日本文法論』寶文館
Kuroda Shige-Yuki 1979 On Japanese Passives. In Bedell, G. et al (eds.) Explorations in Linguistics: Papers in Honor of Kazuko Inoue, 305-347. Tokyo, Kenkyusha. (Reprinted: Japanese Syntax and Semantics: collected papers, Kluwer Academic Publishers. 1992)

履修条件
特になし。

成績評価
授業内での講読文献の発表(30%),出欠及び授業への参加度(20%),用例分析のレポート(50%